第96回:《探偵》どうして「別れさせ工作」が違法なのかを知っていますか?
最近はテレビやメディアなどで「別れさせ工作」や「別れさせ屋」という言葉をあまり聞くことはなくなりましたよね。
一時期ドラマの影響もあって、多くの人がそういった職種もあるんだと知ることにはなり、実際に「別れさせ工作」「別れさせ屋」ビジネスを始める若者も増えたぐらいです。
今は名前を聞かなくなったので、もう存在していないのかなと思う人もいるかもしれませんが、インターネットで「別れさせ工作」「別れさせ屋」と検索してみると、まだまだ健在なのがわかります。
「別れさせ工作」「別れさせ屋」が後を絶たないのは、やはりそれだけ需要があるからでしょう。もし誰もが依頼をしなければ、廃業に追い込まれてしまうのが一般的です。
人の感情というのは、それが違法かもしれないと思っていても、気持ちが昂ってしまうと依頼をしてしまうものなのかもしれません。
ですが、「別れさせ工作」がどうして違法だと言われているのか知っていますか?
何となく倫理的に問題があるからでしょ?と思っている人は多いかもしれません。もちろんそれもありますが、それだけではないのが実情です。
別れさせ工作の手順とともに、解説していきます。
まず「別れさせ工作」を正式に依頼すると、調査員が対象者のことを調べ始めます。仮に依頼人が妻で、対象は夫とその愛人の関係としましょう。
調査員は依頼人の夫と愛人のどちらにアプローチをすべきかを判断するため、尾行調査をしたり聞き込みをしたりします。
ここで問題になるのが「尾行」です。
尾行は探偵に与えられた特権です。つまり「探偵業法の届出」を提出する必要があります。もし提出していない事務所の調査員が尾行をすると「ストーカー行為」とみなされ、犯罪になってしまうのです。
一般の人が、誰かの後を尾行しても罰せられるのと同じですね。
ですが、そんなことすら知らない別れさせ工作をしている事務所もありますので、そこはどうなっているのかをきちんと把握しておく必要があります。
悪徳探偵と同じ見極め方でいいでしょう。
次に、対象者の好みの異性のタイプや趣味嗜好などがわかり、事務所が依頼人の夫の方に別れさせ工作の所員を派遣することに決めたとしましょう。
依頼人の夫の好みの女性に、他の所員たちも手伝いつつ自然な流れで依頼人の夫に近づいてもらいます。
浮気性で自分の好みの女性から言い寄られて、依頼人の夫は簡単に女性工作員に引っかかってしまいます。そして、二人がホテルに行ったところを他の所員がカメラで撮影し、それを愛人に見せます。すると、愛人は「他にも女がいるなんて」と言って、依頼人の夫と愛人は見事に別れることに。
別れさせ工作は成功という風に見えますが、この中にも大きな問題があります。しかもそれは、依頼人にも重い罰が待っているのですが、それが何かわかりますか?
婚姻関係にある二人には、お互いに相手に対して貞操義務があります。
今回の場合、夫には愛人がいるため、夫は初めから貞操義務違反を犯しているのですが、妻が雇った別れさせ工作の事務所の人に夫とホテルに行くように仕向けたという風にも取られてしまい、妻側が夫に対して売春あっ旋をさせたという風に取られてしまうのです。
そのため、別れさせ工作の事務所に依頼をしたということがバレれば、依頼人である妻側が夫に対して慰謝料を支払うことになります。
事務所はそのことを知っているので、悪徳な事務所であれば、それをネタに依頼人を強請ったり。成功報酬の値上げを要求したり、することも。
もちろん依頼人が結婚をしておらず、対象者も結婚していない状態で、ただ恋人関係だったというだけであれば、貞操義務は発生しないので対象者と工作員がホテルに行っても罪に問われることはありません。
別れさせ工作の事務所に依頼をして多額のお金を払い、さらにその事務所が悪徳な手法を使う場所であれば、そんな風に脅されてしまうのです。
こんな風にならないためには、何が合法で、何が違法に当たるのかを、依頼人が事前に知っておく必要があります。
今回の場合ですと、妻が愛人と浮気をしている夫と別れたいと思っているなら、別れさせ工作をしている事務所に依頼をするのではなく、探偵に依頼をしていれば何の問題も起きませんでした。
探偵に浮気の証拠を掴んでもらい、あとは離婚裁判に持ち込むだけで、依頼人は何の罪も犯さずに夫と離婚ができ、夫と愛人から慰謝料をもらうことができたのです。
また、「別れさせ工作」に関しては、殺人事件にまで発展した事例があります。
依頼人が殺されたわけではないのですが、対象者が女性で、その女性と恋仲になったふりをする男性工作員が、依頼が終わった後も付き合い続けたということがありました。
男性工作員が本当にその女性のことを愛してしまったのかはわかりませんが、男性工作員は嘘の経歴で女性に近づいていており、さらに男性工作員には妻と子どもがいました。
男性工作員の妻が夫の様子がおかしいからと探偵に依頼をし、全てが明るみになったとき男性工作員が逆上して人を殺してしまったのです。
恋愛感情というのは形がないものだけに、いつ本気になってしまうのかがわからないものです。対象者や対象者の相手と恋愛関係になって別れさせ工作をするということは、それだけのリスクがあるということを覚えておいてください。
また今は「別れさせ工作」だけではなく「復讐工作」「出会い工作」「ビジネス工作」など様々なものが存在しています。その全ては、人を騙して依頼人にとって有利になるように仕向けるものです。
こう言ったものには必ずリスクがあるということを頭の片隅に入れておいてください。
そして正当な探偵であれば、こういった「工作」の依頼を受けていません。探偵は人が幸せになるためのお手伝いをする職業だからです。人を陥れるような依頼は断っていますので、ご了承ください。
探偵は探偵業法に則った調査しかしていません。探偵の中にも悪徳探偵といわれる事務所も存在していますが、東京都調査業協会のように協会に入っている探偵事務所であればまず問題はないでしょう。
安全な探偵に合法的な依頼をして悩みを解決していきましょうね。
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