第52回:《探偵》意外と世間では混同してる探偵事務所と便利屋の違い
世間には探偵事務所や興信所、便利屋など、様々な名前の業種があります。今あげた3つの名前は全て探偵業を行っていると思いますか?
探偵業を行っているのは、探偵事務所と興信所だけです。便利屋はその事務所によって違うというのが本当のところ。つまり、便利屋によっては探偵業も並行して行っているということですね。
そのため、外から見た時に、便利屋の看板を見つけても、そこが探偵業を行っているのか行っていないのかは、HPを見ないとわかりません。
ただ気を付けてほしいのは、公安への探偵の届出を出しているかどうかというところ。
探偵事務所が事務所を構える前には届出を出さないといけないということは、このコラムでもお伝えしてきましたが、事務所の看板が興信所であっても便利屋であっても、探偵業務を行うなら届出を出す義務があります。
便利屋の中で時々あるのが、HPには探偵業務を行うことは書かれていないのに、何度か利用しているうちに親しくなり、
「実はうち、浮気調査もできるんですよ。最近、おたくの旦那さん、帰りが遅いって思いませんか?」
というようなことを言ってくる人もいます。
もちろん、その便利屋が事務所内に探偵業務の届出を張り出しているなら、その人が言っていることは正しいのですが、届出がどこにも見当たらないのに、そんなことを言って来たら、それは違法業務にあたります。
そもそも一般の人が、便利屋も探偵の一つでしょと思ってしまうのは、これもテレビドラマの影響ではないでしょうか?
便利屋の主な業務内容と言えば、
部屋の片づけ(ゴミ屋敷の掃除)、庭の草むしり、介護のサポート、引っ越しの手伝いなどから、犬の散歩、年配家庭の電球の取り換え、買い物代行など、身近にある仕事の代わりをしてくれるところです。
探偵事務所や興信所ではそういった業務は一切行っていないので、元々は仕事内容がかぶる職業でもないのですが、まだ探偵業務の届出制度がなかった時代、探偵よりも便利屋の方が一般の人に近い立場だったということもあり、依頼人から言われて両方やるようになったというケースもあります。
なので、便利屋には探偵業務も一緒に受けている事務所があるのは本当のことです。
ところで、はじめに出てきた「興信所」。これは今では探偵事務所と同じ業務内容を行っていますが、元々は探偵事務所とは別のものだったということを知っているでしょうか?
興信所は企業や個人の信用調査を行うことを専門に行い、探偵事務所は浮気調査や素行調査など個人に対して調査を行うという違いがあります。
興信所は信用調査を行いますが、対象者が身内の場合や依頼人にとっての加害者である場合以外は、調査を行う前に対象者に自分の正体を明かすというのがルールづけられています。
「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」という法律があるためです。
対象者に通知して調べるというのはどういうことかというと、相手を呼び出してアンケートをとったり、周りの人に聞き込みをしたりという方法をとります。
この時に、
「私は〇〇社の○○さんから依頼されて、ここに来ています。アンケートに答えて頂けますか?」
というようなことを言われてアンケートが始まるので、対象者は依頼人の名前を知ることができ、さらに断ることも可能です。
ただ、調べている相手が、自分が勤めている会社の社長の場合、退職することを考えている人以外であれば、大抵の人は答えてくれるため、依頼人の名前を明かすことが調査の妨げになることはありません。
またこれに対して探偵事務所では、依頼人に調査を依頼された相手が誰であっても、対象者に自分が調査をしていることは伝えません。
「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」が、探偵事務所には当てはまらないためです。
そのため、探偵事務所では依頼人を見極める目も必要とされています。
コラムの中で、何度か悪徳探偵の話をしてきましたが、探偵事務所を訪れる依頼人の犯罪をするための下準備として利用することもあるので、探偵自身もこの人の依頼を本当に受けていいのかどうか、ということを見極めています。
よくある依頼人のパターンとしては、
「彼女が行方位不明になってしまったんです、探してくれませんか?」(男性)
「うちの息子が家出をしてしまって……どうか探して下さい」(女性)
というような訴え。
前者はストーカー行為を繰り返している人物の可能性がありますし、後者はなりすまし依頼だったり、借金の取り立て屋という可能性もあります。
もちろん、下心なしに本当に探してほしいと思っている一般の人もいますので、その人たちの依頼は、なるべく受けるようにはしています。
少し話がそれてきたので話を戻しましょう。
探偵事務所、興信所、便利屋の違いは、大体わかってきたでしょうか?
ただ、最近では探偵事務所が興信所を名乗ることもありますし、逆の場合もあります。ですが、仕事関係や恋人関係などの人物を対象者にしたときに、自分の正体を明かすかどうかという違いがあるため、依頼をする時は自分がどうしてほしいのかを決めてから事務所を選ぶ必要があります。
依頼をする側から見て、ここは「興信所」と書いているけど、本当は探偵社なのかどうかの判断ができなくても、身内の信用調査であれば何も違いはないので気にする必要はありません。
それ以外の調査を依頼するときは、
「御社は、対象者に自分の正体を明かしますか?」
と聞いてみてください。
そうすれば、その事務所が「探偵社」なのか「興信所」なのかがわかるかと思います。
また便利屋ですが、今の時代は年配の一人暮らしが増えてきているため、そういった方からの依頼を受けることが多く、地域密着型の業務体系になっています。
依頼する側も、普段から依頼している人だから気軽に相談できると思って、子どもが行方位不明になった時に依頼をしがちですが、それは探偵の届出を出していないと受けることができないということを覚えておきましょう。
探偵業務は特別な調査を国から許された存在とまではいきませんが、法律の範囲内で最大限に動ける存在です。素人が迂闊に調査をすると違法に触れてしまうことがあるので、注意してください。
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