前者は、身近な人に頼った場合で、後者は人と言うよりはサービス内容や商品、会社などの場合が多いのではないでしょうか。そして、怒りは相手に抗議をしようという気持ちにつながり、苦情という形で表現されます。それが通らなければ、お金を出してでもそれ相応の措置をとり、裁判沙汰になることもあるでしょう。
こういうこともあり得ます。どうしようもないほど追い詰められ、誰に助けを求めたらいいのかわからない時、ふと「探偵」という言葉が頭をよぎると、「これまで依頼したことはないけど、依頼をしてみようかな」と考える人がいます。
もちろんそれは悪いことではありませんし、その人の判断のひとつです。ですが、探偵事務所や興信所に駆け込んでくる人のほとんどが、普段の冷静さがなくなっている場合がほとんど。そのため、勢いで探偵に電話をかけて、「何でもいいから早く調査して」というケースが多くあります。
実際に、現場で依頼人から相談を持ち掛けられた探偵は、よくそういった場面に遭遇しています。
依頼人となる人が冷静な状態でも冷静でない状態でも、探偵は変わらず真摯に対応します。この業界に長くいる探偵の方が、そういった依頼人をたくさん見てきているので、切羽詰まった依頼人がきても対処法を知っていると言った方が正しいかもしれません。
依頼人となる人が冷静な状態でも、冷静ではない状態でも探偵は受け止めてくれますが、探偵と契約を交わす時に、探偵が話している内容をほとんどまともに聞いていない依頼人がいます。
「今の状況から抜けだしたい」「もう我慢ならない」「白黒はっきりつけたい」「早く調査を開始してほしい」と、余裕のない思いで探偵に依頼をしに来ているわけですから、周りの声が届かない状態というのは仕方ないのかもしれません。
ですが、探偵に調査をお願いするというのは、決して安い金額で済む話ではないということも忘れてはいけないところです。
例えば、400万円の車を購入するときに、勢いだけで購入を決めるでしょうか。500万円の家のリフォームをする時に、誰にも相談せずに1人で勝手に決めるものでしょうか。
中にはひとめぼれで車を買ってしまう人もいるとは思いますが、車の性能を調べたり他の車と比較したりするでしょうし、リフォームの場合もいくつかのリフォーム業者と比較して決めたりするはずです。
車の購入やリフォームをするのと、探偵に依頼をするのとでは状況も感情も全く違いますが、契約後にかかる料金は似たようなものです。
それなのに、勢いだけで行動に移し、契約までしてしまう人が意外と多いのも、探偵業界の特徴です。それほどの勢いがない限り、人は探偵に調査を依頼しようとは思わないのかもしれませんね。
心に余裕がないまま勢いで探偵に会いに行き、そのまま契約し、調査を開始してもらう人が多いのですが、中には契約をした後で冷静さを取り戻す人もいます。そしてこれが、探偵に対する苦情に繋がる場合があるのです。
その苦情というのが、「キャンセル料」について。
契約を結ぶ際に、依頼人と探偵の間でしっかりと料金やキャンセル料の話をしているはずだと、依頼をしに行ったことのない人は思うかもしれません。
確かに探偵には契約を結ぶ際に、依頼人に対して契約書の内容についての説明をする義務がありますし、依頼人から契約書で書かれている部分についてわからないことがあれば、きちんと答える義務もあります。
ですが、先程も書きましたが、探偵事務所や興信所を訪れる依頼人の心境はというと、あまり正常ではありません。勢いで探偵に電話をかけ、会いに来ているのですから、普段どれだけ冷静な人と思われている人であっても、ちゃんとした判断ができるかというと怪しいものです。
中には探偵が料金について説明をしようとしても、「それよりも、私の話しを聞いてください」と言って、浮気調査であれば結婚相手との思い出話やここ最近の怪しい行動について話したり、信用調査であれば、自分の身の上話や子どもについての話をしたり、話すばかりで聞こうとしない人もいます。
これまでずっと誰にも言えない悩みを抱えていたので、ようやく聞いてもらえる相手が目の前にいるという状況になったことで、「話を聞いてほしい」という気持ちだけが前に出てしまうのも仕方ないのかもしれません。
ただ探偵は、カウンセラーではなく調査をするプロです。依頼人から調査内容をヒアリングして、調査のセッティングをし実行、そして報告書としてまとめ上げて依頼人に渡すのが仕事。
調査内容を知るためにヒアリングをするのには、どういった調査をするのか、何日ぐらいかかりそうなのかを計算するのにも必要なので、詳しく聞く必要があります。ですが、そういったヒアリングに慣れていない依頼人は、カウンセラーや知人に相談するのと同じような感覚で話をすることがほとんどです。
一般的な生活を送っていれば、誰かにヒアリングをされるということは、ほとんどないので仕方ないでしょう。例えば、結婚式場でどんな式を挙げたいのかのヒアリングをコーディネーターがしていても、恋人たちは自分たちの思い出話をしてしまうというのと同じなのかもしれません。
コーディネーターも探偵と同じで、自分が知りたいと思っている情報を引き出すために、何度も何度も相手に質問を投げかけているはずです。
そうやって話をしていると、必然的に会話の時間(主に依頼人が話をしている時間)が長くなり、話し切ってしまうと疲れてしまう傾向があります。そのため、探偵が依頼人の話を聞いてから事務的な話をしても、あまりちゃんと聞いていないケースがあるのです。
依頼人が相談をしに行って聞きたいと思っている話は、どんな調査をしてくれるのか、どんな結果を出してくれるのか、どれぐらいの費用がかかるのかの3点。それ以外のことは、特に深く考えていない方がいます。
ですが、探偵に調査を依頼して契約を結んでから、自宅に戻った時に冷静に戻る場合があるということを少し前にお伝えしました。もしかしたら、調査を依頼してから、しばらく過ぎた後に冷静になるという人もいるかもしれません。
契約をした後で、依頼人がふと「本当にあの探偵に調査を依頼してもよかったのか?」と不安になった場合、まだ実調査が開始される前なら、探偵にキャンセルを伝えてくる人もいます。
実調査が5日間を予定していて、1日目が過ぎ、探偵からその日の報告が来た時に怖くなって「キャンセル」という言葉が頭をよぎる人もいます。
そんな場合、依頼人は探偵に対してどれだけのお金を払わなければいけないと思いますか?
依頼人が「キャンセル」のことを考える場合はあっても、その時に「キャンセル料」がいくらだったのか、ということを覚えている人はほとんどいません。
それは、契約書に「キャンセル料」のことが書かれていなかったからでしょうか? それとも、契約時に探偵が一切「キャンセル料」について触れなかったからでしょうか?
まともな探偵と契約を結んだのであれば、契約書にはキャンセル料について明記されていますし、契約時にも説明を受けているはずです。それなのに、依頼人の頭に「キャンセル料」のことが全く残っていないのはなぜでしょうか?
探偵と契約を結ぶときに、依頼人自身がキャンセルをするとは考えていないため、探偵の話をちゃんと聞いていないということが考えられます。
ただ、心の余裕がなくなり、これを解決できるのは「この探偵しかいない」と思って連絡してきているのですから、依頼人自身もキャンセルを考える未来を思い浮かべる人はいないでしょう。
実際に、探偵と契約を結ぶ際に、「こんなに探偵に話を聞いてもらったんだから、依頼しなきゃな」とか「勢いでここまで来てしまったけど、家に帰ってみたら冷静になって、探偵に依頼をするのをやめようと考えるかもしれないな」と考える依頼人であれば、そもそも探偵と契約をしたりしません。
話を聞くだけ聞いてもらってから、実際に契約をしないという依頼人も中にはいますが、それは違法ではありませんし、話を聞くだけでは料金が発生していないことがほとんどなので、そのまま帰ったとしても誰かにとがめられることもありません。
探偵と話をしているうちに、もしかしたらキャンセルするかもしれないと思ったり、このまま勢いで契約するのは危ないのではないかと思う人であれば、その場で契約を結ぶということをしません。
「契約書を持ち帰って、家で考えてから最終的な判断をします」
と言って、探偵事務所や興信所を去る人もいます。
それは、契約しないと暗に言っている場合と、本当に探偵に調査を依頼すべきなのかをじっくり考えたいと言っている場合の2パターンがありますが、契約書を持ち帰った人は、ほとんどの場合、そのまま契約をしない可能性の方が高いと言えます。
つまり、キャンセルをする可能性があると思った依頼人は契約をしないですし、キャンセルをするわけがないと思った依頼人は、キャンセル料について話をしている探偵の言葉を真剣に聞くことはないということです。
中には勢いで契約をしたものの、「クーリングオフ制度」を使えると思ってキャンセルを言ってくる人もいます。ですが、探偵事務所や興信所で契約した場合、クーリングオフ制度を使うことができません。
なぜなら、クーリングオフは訪問販売であったり、キャッチセールスで業者が別の場所に契約者を移動させたりして契約をさせたときに、あとから解除ができるというものだからです。
探偵事務所や興信所で契約するのは、探偵に声をかけられて事務所に入ったわけではなく、自分の意志で事務所に向かい、契約をしたため対象外になってしまいます。
ところが、探偵と喫茶店などで会って、契約をした場合にはクーリングオフは適用されます。喫茶店は、探偵事務所や興信所のテリトリーではありませんので、契約者側が探偵に電話をして、待ち合わせ場所を決めて会っているため、クーリングオフ対象になります。
クーリングオフの制度は、探偵が勝手に決めているわけではなく、国の消費者庁が定めたものです。検索して調べてみると、症例などが様々出てきます。
そのため、探偵と契約を結んでから8日以内であっても、クーリングオフを使ってのキャンセルが出来る場合と出来ない場合があります。
中には、事務所で契約書を書いたけど、印鑑を持っていなかったので、自宅で押したからクーリングオフができると言ってくる方もいますが、それも対象外になります。
契約書を書いている時点で、契約をする意思があるとみなされてしまうためです。
探偵と契約を結び、キャンセルをしようとすると、クーリングオフはできないため、キャンセル料が発生します。
ただ、このキャンセル料に関しては、探偵業界ではこうするのが一般的だという指数がありません。すべて、その事務所ごとで決めています。
キャンセル料について契約書に書かれていないということはないため、キャンセルをするのであれば依頼人が契約書を見て確認する必要があります。
探偵事務所や興信所では、キャンセル料を制約金の30~50パーセントに定めているところが多くあります。
例えば、浮気調査で成約金額が200万円といわれた場合でキャンセル料が50パーセントであれば、キャンセルをすると100万円を支払わなくてはいけないということです。
例え、昼間に契約をして夕方に家に帰ってから契約したことが怖くなって、キャンセルを申し入れしたとしてもです。たった数時間であれば、何もしていないのだからキャンセル料が発生するのはおかしいと苦情を言ったとしても、契約を済ませているのでどうにもなりません。
依頼人が弁護士に相談をしに行ったとしても、消費者庁に相談をしに行ったとしても、裁判をしたとしても、探偵は何も不当なことをしていないため、契約書に書かれている金額を払うことになります。
探偵に依頼をして、キャンセルをする人の割合はだいたい100人に1人ぐらいです。そのすべての人が、キャンセル料に対して苦情を言うわけではありませんが、一定数いることも確かです。
探偵と契約を結ぶ際には、その時にはキャンセルなど考えないかもしれませんが、契約内容の1つとしてしっかり聞くことが大事です。
そしてキャンセル料に対して苦情を言う人のほとんどが、自分の事情でキャンセルをしようとする人です。
先ほども書きましたが、契約をしたものの家に帰ったら冷静になって怖くなったのでキャンセルしたくなった場合。それ以外にも、契約して数日が過ぎてから、ふと冷静になって探偵に調査をしてもらわなくても自分で何とかなるんじゃないかと思った場合や、探偵と契約したことを身内に話して反対された場合などもあります。
また、注意しなくてはいけないのが、キャンセル料は成約金額の50パーセントだったとしても、実働分も加算されるため、さらに金額は膨らみます。
探偵に調査をお願いしなれていない人は、探偵のいう「実働」というのが、実際に調査を始めてからだと思っている人がほとんどです。
ですが、調査を始める前に、事前準備のために事前調査を行っています。面割りといって対象者の実物を確認します。依頼人から提供された写真と実際の人物がまるで違うという場合があります。あとは対象者を尾行して調査をするのであれば、対象者の予想される足取りを事前に確認しておき、どのポイントからなら対象者に気づかれずに近づけるのか、どこで張り込みをするのがいいのかなどを調べるために行います。
事前調査を行う前には、探偵事務所や興信所が調査員を手配するということも行っています。そのため、契約をして数時間しかたっていなかったとしても、探偵は契約後すぐに何かしらの作業をしているものです。
一般の人からは見えない部分ですので、契約したばかりなんだから何もしていないと思われるのも仕方ないのかもしれません。
また、契約書を交わしたものの、成約金額があまりにも違法で、詐欺にあってしまったと気付きキャンセルした場合は、キャンセル料を支払う義務があると思いますか?
実はこの場合でも、依頼人からどれだけ苦情を言われたとしても、キャンセル料を支払わなくてはいけません。
調査料金が法外な金額だったとしても、その金額を見た上で、依頼人が契約書に署名をしているからです。ただし、契約書に署名をする際に、「脅された」という証拠がある場合は、もちろん契約書は無効になるので、キャンセル料は支払う必要はありません。
お客様からの苦情を受け付けている東京都調査業協会や消費者庁、弁護士、警察などに証拠を持って相談すれば、その事務所を取り締まることができます。
ですが、脅されたわけでもなく、自分から出向いて契約をしたのであれば、金額が高すぎると言って契約破棄をすることはできません。
一般的な調査料金というのはありますが、必ずしもその金額で調査をしなければいけないという決まりがないからです。
身近な例で言うと、Aというスーパーには100円で売られているお菓子が、Bというスーパーでは120円で売られていたり、Cというスーパーでは180円で売られていたりします。ですが、高いからと言って、違法行為ではありません。
買い手側が180円でいいと思えば、C店で買うこともあります。あとで、A店に行ったときに、「失敗した」と思うかもしれませんが、C店では値段が高かったから返品しますというのは、おそらくC店では受け入れていません。それと同じことです。
世の中で売られているサービスや商品には、原価というものはありますが、いくらで販売するかは売り手側が自由につけられるようになっています。原価が50円なのに、サービスで50円で販売するのも、そのお店の自由です。
ただ高値で売ってしまうと、周りから「ぼったくり」というレッテルを張られてしまう可能性はあります。
でも、ぼったくりであったとしても、違法ではありません。近場の居酒屋で400円のビールが、高級なバーで同じものを頼むと1000円以上したとしても、高いからと言って支払わないという選択ができないのと同じです。
契約書に署名をする際には、依頼人側の冷静な判断が必要とされます。
契約をした後になって、「あの時は冷静じゃなかった」といっても、契約書がある限り、そこに書かれている通りにするしかありません。
ただし、すぐにキャンセルをする場合は、契約書にキャンセル料のことが書かれていたとしても、直接探偵と交渉することは可能です。
直接交渉するのではなく、「苦情」という形で、消費者庁や弁護士などに相談したとしても、契約書に書かれていることを優先しなければいけないとの回答しか得られませんが、契約をした探偵と直接交渉するのであれば、場合によってはキャンセル料を減らしてくれる探偵もいます。
ですがこれは、探偵の善意であって、キャンセルする側がお願いをすることで初めて成立するものです。「こんなの詐欺よ。キャンセル料なんて支払わないわ」というような態度では、探偵も善意を見せることはありませんので、気を付けてください。
では、どうしたら、「キャンセル料」に関する苦情を減らすことができるでしょうか。
完全になくすことはできませんが、減らすには2つのことが必要だと考えます。
1つ目。
探偵側によるキャンセル料についての説明の徹底。
依頼をしようとしている側が、余裕のない状態で相談をしに来ていたとしても、相手の頭に残るようにしっかりと説明をすることです。
依頼人は「キャンセルなんてするわけがない」と言うかもしれませんが、それでも、キャンセル時にどういうことが起こるのかについて丁寧に言っておくことで、依頼人が何かのきっかけで「キャンセルしようかな」と思った時に、「そうか、キャンセルをすると結構な金額のキャンセル料を支払わなくてはいけないんだな」と即座に頭に浮かばせることが大切です。
そうすれば、依頼人はキャンセル料を支払ってでもキャンセルを探偵に伝えるか、とりあえず最後まで調査をしてもらおうか、と考えることができます。
しっかりと考えて出した答えなので、キャンセルをすることを決めたとしても、苦情にはなりません。
2つ目。
依頼人側に探偵に対する基礎知識をつけてもらうこと。
依頼人が探偵に苦情を言ってしまうのは、探偵に対する知識があまりにも少ないためという側面もあります。探偵の行動には、公にはできない部分も多くありますが、だからといって何をしているのかわからない人を信用するのは難しいものです。
調査料金も、決して安いものではないので、ある程度の知識を持っていないと、ちょっとしたすれ違いで苦情を生んでしまうのも仕方ありません。
例えて言うなら、Aさん初めて入った居酒屋でたまたま隣に座ったBさんと少し話をして、話しやすそうな人だなと思ったので、100万円を隣町にいるCさんに届けてほしいとお願いするのと同じです。
Bさんには、隣の駅に着いたときと、Cさんにお金を渡したときに連絡をして、終わったら居酒屋に戻ってきてほしいとお願いしていたとします。
そんな中で、もしBさんが隣町に向かう電車が遅れて、予定よりもAさんに連絡する時間が遅れたら、Aさんはどう思うでしょうか?
「電車が遅れたのかな、それなら仕方ない」と思うでしょうか?
そんな風に思うような人はほとんどいませんよね。
「なんか怪しい……」
そう思ってしまうはずです。
電車遅延はいつでも起こりうることで特別なことではありません。ですが、たったそれだけの事でもAさんはBさんに疑いの目を向けてしまいます。
ですがAさんがBさんに渡した金額が1万円だったらどうでしょう?
おそらく、Bさんが「電車が遅れて」と言えば、Aさんも「仕方ないよ」とすんなり答えたはずです。
AさんとBさんの信頼関係が、それほどなかったとしても、大した金額でなければ、人はおおらかになれます。でも、100万円だと、そうはいきません。
気楽に出せる金額じゃないからこそ、余計に神経質になってしまうものです。
依頼人と探偵でも、同じことが言えます。
依頼人は、1、2回会っただけの探偵に100万円以上のお金をかけて調査を依頼しています。
しかも、依頼人側のプライベートはさらけ出しているのに、探偵側のプライベートは一切公開されていません。依頼人側だけが不利になるようなことを探偵に伝えて、高い調査料金を支払おうとしているのですから、ちょっとしたことで苦情を言ってしまうのもわかります。
依頼人が、探偵に相談を持ち掛けたときは調査をしてもらおうという気持ちが強かったものの、途中でしり込みをしてしまい、「キャンセルしようかな……」と思ってしまう人が一定数いるのは、そのためでしょう。
依頼人と探偵の信頼関係を結ぶ必要がありますが、それにはまず、依頼人側も探偵がどのタイミングでどういうことをして、調査に取り組んでいるのかということを知る必要があります。
それがわかっていれば、契約をしてからこれだけの時間が過ぎているから、おそらく探偵は今こういう状態だなと予測をつけることができるからです。
一昔前までは、探偵自身がどういう流れで調査を行っていたのかということを調べることもできませんでした。
探偵事務所や興信所も、それを開示する意味を持っていませんでしたし、依頼をしようかと迷っている人にも手段がなかったとも言えます。
ですが今は、探偵事務所や興信所でも綺麗なHPがありますし、それぞれの探偵たちが自分たちが行っていることを記事やブログという形で日々アップし、依頼を迷っている人たちに向けてメッセージを送っています。
一家に一台のパソコンだった時代から、一人に一台以上のスマートフォンという時代になり、誰もが気軽にネットで検索できるようになりました。
30代の人たちから、それより若い世代はスマートフォンを使うのが当たり前ですし、40代以上の人たちも、使いこなせている人が増えています。
依頼する側も、「もう探偵に相談するしかない!」と追い詰められていたとしても、事前に探偵とはどういうものなのか、どういう調査をしてくれるのか、ということを調べることができます。
一刻も早く探偵に相談して、調査を開始してほしいと思う人もいるかもしれませんが、事前にちゃんと調べていなかったために、探偵を名乗る詐欺のような事務所に依頼をしてしまったり、探偵がどういう調査をするのかの流れがわかっていなかったために、せっかく契約しても「キャンセル」したいと強く思い、無駄なお金を支払うことになる可能性もゼロではありません。
依頼をした側が、「キャンセル」をしたいと思ってしまう裏には、依頼人側が事前に探偵とはどういうもので、どういうタイミングで調査を開始するのかを全く把握していなかったということもあるのではないでしょうか?
ただ、依頼人の問題ではなく「キャンセル」をしなければいけない状況になることもあります。
例えば、浮気調査の依頼をお願いして契約をした後で、調査が始まる前に結婚相手から「浮気」を打ち明けられ、慰謝料も支払うと言われてしまえば、探偵に調査をお願いする意味がありません。
他にも、娘が結婚するので、婚姻届けを出す前に相手の信用調査を依頼したものの、調査をする前に2人が別れてしまったり、相手の男の浮気現場をたまたま見てしまったりした場合、探偵に調査をしてもらう必要がありません。
こういったケースも、時々起こることです。キャンセル料が発生してしまうのはもったいないですが、依頼人側が事情を話せば、探偵側も多少は融通をきかせてくれるかもしれません。
それなのに、契約のキャンセルに関連した苦情が出てしまうのは、キャンセルを決めた依頼人自身もまだ冷静になれていないのかもしれません。
探偵と依頼人との間で繰り返される「キャンセル料」での依頼人からの苦情。
探偵も一企業と同じだという風に思ってもらえれば、契約書を交わすときに落ち着いて内容を確認できるかもしれません。
基本的に契約書に署名をした後では、そこに書かれている「キャンセル料」に対して、どんなに苦情を訴えたところで、訴えた側が勝つことはありません。
すべては契約書に書かれていることが、一番正しいことだからです。
これは、どの業種の人に相談しても同じ答えが返ってくるでしょう。
苦情を出すことで、出した本人の感情が昂り、現状が全く見えなくなるという可能性もあります。
苦情を出すときには、一度冷静になって考えてから、行動に移す方がいいかもしれません。戦っても勝てない勝負に挑むのは、時間もお金も無駄にしてしまう可能性があるからです。
何度も繰り返しますが、探偵に相談をするときには、どんなに余裕のない状況に追い込まれていたとしても、深呼吸をして探偵とどういったトラブルになる可能性があるのかを事前に調べていくことをお勧めします。