2024-12-03
第286回:《探偵》探偵に相談できることとできないこと
探偵に相談しても依頼を受けてくれないなんてことはないと思っていませんか?
探偵のイメージはドラマや映画、小説の中の探偵という人がほとんどです。実際の探偵がどういうものなのか、ということを一度も依頼をしたことのない人が正確に理解していることはないと言ってもいいでしょう。
そのため、法外な金額がかかる、お金を積めばどんな依頼でも受けてくれると思っている人が一部います。法外な金額がどれだけの金額からを指すのかはわかりませんが、複数の探偵社に見積もりを出すことで、この業界の相場が見えてくるでしょう。
リアルな探偵業界のことを知らない人が多いので、もしかすると見積もりで出てくる金額を高いと感じる人もいるかもしれません。ただ、それは何と比べて高いと判断しているのか、というところが重要です。
訓練を積み、複数人で調査をし、長時間の拘束をするのが調査です。ドラマや映画、小説では話の都合で、1人の探偵が受付をして、本人が1人で調査をしていますが、実際はもっと大勢が調査に関わっています。そういった目で人件費を考えてみると、どうでしょう?
また調査をするにあたって、車を使ったり、特殊な機材を使ったりすることもあります。
それなのにもし、浮気調査の依頼をして「調査費用は1万円です」と言われた場合、どう思いますか?
その金額の場合は、実際に調査はせず、依頼を受けた本人が事務所のパソコンで簡単に調べたり、証拠を捏造するために加工写真を作ったりして終わりだろう、と思いませんか?
つまり、普通に考えて、調査費用が1万円はありえないということです。
では法外な金額とはいくらでしょうか?
1000万円、1億円という見積金額が出てきたら、確かにそれは法外な金額でしょう。何にそんなにかかっているのかを、項目ごとに聞く必要があります。
探偵が調査をするというのは、それだけ裏で動いていることが多いため、ある程度の金額になるのは仕方のないことです。また見積もり金額を出してもらう時に、人件費や機材費などの項目も分けて出してくれるところもありますし、分けていない場合は、分けてくれるように言えば、分けてくれます。それを見ることで、その探偵事務所がどういう構成で調査をしようとしているのかもおのずとわかるでしょう。
話しがややずれてきましたが、お金の問題ではなく、お金を積めばどんな依頼でも受けてくれるのが探偵だと思っている人は、未だに一定数存在しています。
ですが、探偵事務所の看板を表に出すときには、公安に届出を出す必要があるため、犯罪に絡むような依頼は一切受けていません。もし引き受けている事務所があったとすれば、それは探偵事務所ではなく、犯罪集団です。それだけ別物だということを理解しておく必要があります。
また、何が犯罪で、何が犯罪じゃないのか、というところも一般の人は理解できていない場合があります。
今もまだ存在はしていますが、例えば「別れさせ屋」という団体。これは探偵事務所とは関係ありません。中には探偵事務所と看板を出しながら「別れさせ工作」も引き受けますと堂々と書いている事務所も昔は見かけましたが、これらは全部違法です。
「別れさせ屋」という言葉が広がったのは、民法で放送されたドラマがきっかけでした。ある夫婦がいて、夫が不倫をしているから、夫と不倫相手を別れさせてほしいという依頼。これは、法に引っかかるか、引っかからないかというと、やり方によっては引っかからない場合もありますが、基本問題行為です。
真っ当な探偵であれば、夫と不倫相手の不倫の証拠を依頼人である妻に渡し、妻が証拠を夫に見せて別れさせるか、妻が裁判沙汰にして別れさせるかのどちらかを促します。この行為は正当な方法で、不倫をされているなら、とった方がいい行動です。
ですが別れさせ屋がとる行動は、不倫をしている二人を不仲にさせる方法です。美人局をしたり、相手に対して嫌がらせをしたり。これは軽犯罪、もしくは犯罪です。
さらに別れさせ屋に依頼が来る内容として、とある夫婦がいて、夫側のことを好きになった第三者である女性が、その夫婦を別れさせてほしいというものや、相手が夫婦ではなくても恋人同士であっても、その恋人の二人を別れさせてほしいといった依頼まで来ることがあります。
こういったことに対して、探偵は一切依頼を受けていません。探偵業の基本として、人を陥れてはいけないというのがあるからです。妻から夫が不倫しているかもしれないから、不倫調査をして欲しいというのと、不倫相手から夫婦を別れさせてほしいというのでは意味が違います。
また人探しの依頼に関しても、用件によっては探偵は依頼を受けていないことがあります。
例えば、子どもの頃に遠くに行った父親を探して欲しい、音信不通になった娘を探して欲しい、という依頼は受けることがあります。ですが、突然出て行った妻を探して欲しい、ある日突然消えてしまった恋人を探して欲しい、というケースは断る場合があります。
なぜなら、探偵に相談をしている時は、妻や恋人を心配する人物を演じている依頼人であっても、本当はDVをしていたり、ストーカーだったりする可能性があるからです。これは、夫婦、恋人に限らず、親子の場合も当てはまることもあります。
人探しの場合、もし依頼を受けたとしても、探されている人を探偵が見つけた時に、探偵がその人に接触をし、依頼人のことを話し、依頼人に会うかどうかを聞いています。そしてそこで会いたくないと言われたら、たとえ依頼人であっても探している人の居場所を伝えません。
その人の前から来ている理由が、何かしらあるはずだからです。人さらいなど犯罪に巻き込まれて、自分の意志ではなく遠くに行ってしまった場合は別ですが、自分の意志で離れていったなら、そこには理由があるのが当たり前です。もちろんこれは、依頼を受けた時にも、説明をしています。
また、探偵が犯罪に手を染めないのにも理由があります。探偵が調査中に犯罪をしてしまうと、その調査を依頼した依頼人も犯罪者になってしまうからです。もちろん、探偵が犯罪集団ではないので、法は犯さないというのは大前提ですが。
探偵は依頼されれば何でも引き受ける集団ではありません。法の範囲内で、依頼人の不安を解消させてくれる業界だということを覚えておいてくださいね。