2022-12-19
第192回:《探偵》探偵の真似事をすることで問題になることもたくさんある
探偵を名乗るのに必要なのは、公安に探偵の届出を出すだけです。特に技能試験のようなものは存在していないため、誰もが探偵を名乗ることができます。また中には、探偵の届出さえ出していない、問題のある業者もいますし、業者ではなくても個人で友人知人の依頼を受けて、にわか探偵のようなことをしている人も存在しています。
ですが、生業として探偵を行っている人と、そうではない人では明らかに違いがあります。生業として探偵をしている人は、基本的には横のつながりがあり、探偵として何をしていいのか、何をしてはいけないのかの線引きができている人です。ですが、生業としていない素人では、その辺りの線引きを知らないため、やりすぎてしまうことがあります。
例えば、探偵と言えば「尾行」というほど、有名な調査方法ですが、これもどこまでやると問題になり、どこまでなら問題にならないのか、ということを知っているでしょうか。探偵は法の目をかいくぐった行動を取ることはありますが、法を犯すような行動は決して行いません。
どこまでやれば法に触れるのかという法律の勉強も、探偵は行っているため理解しています。また、勉強を終えた新人の探偵は、訓練された先輩の探偵と一緒に調査をすることが多いため、そこで先輩の探偵に怒られながら、何をしていいのか、何をしてはいけないのかを実体験でも理解していくので、問題はありません。
ですが、素人探偵は、探偵のつながりがないため、当然ながら初めての尾行などの調査を行うときも、訓練された先輩探偵と一緒になって調査をすることはありませんし、生業として探偵をしているわけではないので、法律のことも特に考えずに尾行をしてしまうことがあります。そうすると、知らず知らずのうちに法律を犯していることもあるのです。
また、探偵に調査を依頼すると調査報告書を渡され、その報告書は証拠として使うことができます。証拠となるのは、例えば不倫の証拠、いじめの証拠、問題の行動を取っている時の証拠などです。これらは法廷で争う事になった時でも、証拠として使えるものを探偵は報告書にまとめています。
それが素人探偵だった場合、仮に浮気の現場を写真に収めたとしても、それが法的な証拠としてなりえない場合があります。心情的には、自分の夫や妻が異性と一緒に仲良さそうに歩いているところを見るだけで、浮気は確定となるでしょう。ですが、法的な証拠となると男女が仲良さそうにしているところを写真に収めても、それだけでは浮気の証拠とはならないのです。
浮気の証拠として有効なのはどういう写真なのか、いじめの証拠としての有効なのはどういう写真なのか、何か問題の行動をしている証拠として有効なのはどういう写真なのか。そういうことを、素人探偵は知りません。また、その写真があるために、写真を提出した本人が捕まってしまうこともありますし、法的証拠とはなりえない写真があるために、相手側がそのことを隠ぺいしてしまう恐れもあります。
また素人探偵の場合、尾行の達人ではないため、尾行をしている人に気づかれてしまう可能性もあります。そうなるとどうなるのか、わかりますよね。素人探偵はすぐに自分の素性をばらしてしまいますが、プロの探偵は自分の素性は明かしません。そういった意味でも、素人探偵は危ないと言えます。
また、素人探偵に自らなる人もいます。例えば、夫が浮気をしているようだから、妻が素人探偵になって尾行をするというパターンです。対象者と尾行をしている人が知り合いの場合は、もっとも尾行をしていることがバレやすいので、対象者がよほど周りの目を気にしない人ではない限り、すぐにバレてしまうでしょう。
素人探偵が行う調査は、浮気調査だけではなく素行調査の場合もあるかもしれません。その場合、尾行をしてみると本当に危険な人物と対象者があっていた場合、どうなるでしょうか? 危険な人物は普段から周りの目を気にしていますので、素人よりも尾行をされていると気づく可能性が非常に高く、素人探偵では歯が立ちません。とても危険な状況になるというのは、すぐにわかるかと思います。
このように探偵の真似事をするのはやめた方がいいということです。友人や親しい人が、浮気などの問題で悩んでいるなら、自分で解決しようとせずに、「探偵に相談をしてみようよ。不安なら一緒に行くから」というのが、ベストな行動だと思います。
探偵という普段はあまり接しない職種の人に会うのは不安なことだと思います。ですが、自分で調べたり、友だちに調べてもらうのはもっと危険だということを覚えておきましょう。
あと、冒頭で少し触れていた、探偵の届出を出していないのに、探偵を名乗っている業者。そういった業者は、いくらプロを名乗っていたとしても、相談をしないようにしましょう。
このコラムでも何度かお伝えしていますが、探偵の届出を出すということは、何か違法を犯したときにはすべて公表されるということを指します。つまり、探偵の届出を出していないのに「探偵」を名乗っているということは、素人探偵か違法なことばかりを繰り返している悪徳業者という可能性が非常に高いということです。
「探偵」という職業は、仕事内容も秘密にしなくてはいけないことが多いため、何を扱い、どんな仕事をしているのかが見えにくい存在です。その見えにくさを利用して、相談者をさらに騙そうとする人たちもいるということを覚えておいて下さい。
まっとうな探偵事務所であれば、必ず探偵の届出を出しています。そもそも、探偵になるのに資格が必要ではなく、届出を出すだけで「探偵」を名乗れるのに、それさえも出さない業者と考えると、どれだけ危険な存在かはわかりますよね?
探偵の届出を出している探偵であれば、悪徳業者ではない可能性も高いですし、素人探偵でもない可能性は高いので、探偵選びの基準として「探偵の届出を出しているか否か」は重要な部分です。
悩んでいる時、悩みが深刻化している時に、探偵の届出を気にする余裕はないかもしれませんが、注意してみて下さいね。