2022-07-17
第172回:《探偵》なぜ探偵という職業がなくならないのか
世の中には数千、数万という種類の職種とサービスが存在しています。
新しい職種やサービスも生まれる一方で、廃れてしまう職種やサービスもあります。
時代の流れによって、生まれたり消えたりというのは当たり前に起こることです。
例えば、昭和初期頃に黒電話の普及が始まり、電話の交換手という職業がありました。今の時代では考えられないことかもしれませんが、AさんとBさんが黒電話で通話をしようと思うと、まずAさんが交換手に連絡を取り、Bさんに通話をしたいと伝えます。すると交換手が、AさんとBさんの電話の回線をつないで、ようやくAさんとBさんが通話できました。
番号を回せば、希望の相手に繋がるわけではないということです。今は、通信回線があるので、希望の番号を押せば繋がりますが、そうではない時代があり、「電話の交換手」という職業が必要でした。
黒電話の数が増えれば増えるほど、電話を使う人が増えていくので、電話の交換手の求人がありましたが、交換手がいなくても自動で電話が繋がるようになると、電話の交換手という職業についていた人は、退職をせざるをえなくなります。
電話を使う人によっては、交換手がいなくても電話が繋がるのであればそれでいいので、交換手の人たちがどうしたのか、ということは気にもしていないでしょう。
もしかしたら、電話が通信によって繋がるようになることで、交換手の人たちが集まって、会社に抗議のようなことをしたかもしれませんが、そういったニュースは特に今に聞こえては来ません。
そんなふうに、時代が進み、生活が便利に、そして進化していく過程で、新しい職業が増え、不要になった職業が消えています。
今も、時代は過渡期と呼ばれており、十年後にはなくなる職業というサイトができてしまうほど、色々と言われています。ITが進化し、AIやロボットが単純作業を行うようになるので、人間の仕事が奪われる…と嘆いている人もいますが、そう言ったことは今に始まったわけではないということです。
昭和の時代から、いえ明治、大正時代もそうですし、江戸時代の頃も同じことが言えるでしょう。日本にいた武士は、時代の流れとともに消えていきました。
つまり、時代に合わせて必要な職業が変わっていくというわけです。
そんな中で、「探偵」という職業は、どうだと思いますか?
日本で初めて「探偵」を名乗った人が現れたのは昭和初期です。
探偵の前段階というわけではありませんが、現在の探偵が行っていたような業務内容を、他の形で行っていた人であれば、もっと昔から存在していますが、あくまで「探偵」という名前になったところから見てみましょう。
探偵は、日本で活動をし始めた当初から、個人から依頼を受けて調査をする探偵、企業から依頼を受けて調査をする探偵がいました。つまり今と変わらないということです。
当時から、裏家業という印象を持たれていた「探偵」ですが、それは受ける依頼内容が表ざたにはしづらいことだからという点があるのでしょう。
裏家業イコール悪い事をしていると思われがちですが、そうではなく、表ざたにしづらい依頼内容というのは、個人や企業が表向きには発表したくないようなことを探偵に相談し、調べてもらっているから、という意味です。
例えば不倫問題。
今でも不倫はご法度ですし、世間にはバレたくないことです。ですが、だからと言って、伴侶が浮気をしているような気がすると思った時に、何も調べずに放置をするという選択肢はないと思います。
また、これは今でもそうですが、田舎にいけばいくほど、人の悪い噂というのは広まりやすいものでもあります。
だから、「うちの旦那が不倫をしている気がするんだけど、そういうところを見かけなかった?」と、近所の人に聞ける人は、まずいないでしょう。
自分の伴侶が、浮気をしている、しないないということははっきりさせたいという気持ちがあったとしても、「自分の伴侶が浮気をしているかどうかを疑っている」ということも、「自分の伴侶が浮気をしている」ということも、近所の人には知られたくありません。
浮気をしている人が白い目で見られるだけではなく、浮気をされてしまった側もまた白い目で見られるからです。同情されるだけならましですが、身勝手な平等主義者が「浮気をされる方にも非がある」と言い出して、批判をする人もいます。
人は自分が正しい、間違っているという以前に、声の大きな方に流れていくものですので、時として本当は被害者だという人を責め立てる風潮になることだってあるということです。
そういう背景もあり、伴侶が浮気をしていても、誤解だったとしても、それを自分が調べようとしていることも、世間には知られたくありません。そんな時に必要になってくるのが、秘密裏に調査をしてくれる探偵です。
これは、個人からの依頼だけではなく、企業からの依頼でも同じです。
一般の人の中には、企業が探偵に調査の依頼をしていることを知らない人もいるでしょう。企業側も、大っぴらには探偵に調査の依頼をしていることを世間には言ったりしません。個人が世間には秘密にして調査をしてほしいと願っているのと同じで、企業も世間には秘密にして調査をしてほしいと願っているからです。
探偵に依頼をする、ほとんどの人が周りには知られたくない、世間にはしれたくないと思っているの、自分が探偵に依頼をしたということは言いませんし、世間からすると探偵っていったい何なんだろう? という疑問がわいてしまうというわけです。
ただ、話を冒頭に戻しますが、時代の流れによって職業は増えたり、消えたりを繰り返しています。その職業にしがみつきたいという人がいたとしても、世の中がその職業は不要だと思えば、自然となくなってしまうものです。
それなのに、昭和から日本でも生まれた「探偵」という職業は、令和になってもなくなることはありません。
つまりそれは世の中が、探偵を不要だと思っておらず、まだまだ探偵に相談をしたいことがあるということを意味しています。
困ったことが起きた時に、誰にも相談ができないと思うことに直面した時に、意外と個人でも依頼をしている探偵に相談をしてみてはいかがでしょうか。きっと悩みが晴れるはずですよ。