2019-05-31
第63回:《探偵》違法探偵と合法探偵の線引き。違法探偵は警察にも突き出すことができる場合がある
東京都調査業協会では、違法探偵を含む悪徳探偵は登録できなくなっていますが、世の中にはまだまだ違法を犯している探偵が、たくさんいます。
違法を犯したり、不自然なことをする探偵に疑問を持ったり、苦情が出たりした場合には、当協会に相談することもできますが、内容によっては警察に突き出して刑事罰を与えたり、弁護士に相談して民事罰を与えたりすることもできるのです。
では、どんなことが「違法」になるのかを、お伝えします。
■依頼時に起こる問題
無料相談をするために探偵事務所や個室で探偵にあっていた時に、探偵から「今ここで契約書にハンコを押してもらうまでは帰しませんよ」と、冗談交じりであっても(本気な態度でももちろん同じです)言われた場合は、刑法220条「逮捕・監禁罪」にあたります。
「探偵ってこんなこともしてくるんだ、怖い!」と思うだけではなく、依頼人もこれは犯罪なんだということを認識することが大事です。犯罪が今行われていると思ったら、ちゃんと証拠を残せるようにしましょう。
その場合は、契約は無効になりますし、探偵も警察に突き出すことができます。
次に、これも似てはいるのですが、「いいから早く契約しろよ!」というように、強制的に契約を強いられた場合も刑法223条「強要罪」に当てはまります。
大抵の場合は、「逮捕・監禁罪」と「強要罪」は一緒に行われるかもしれませんね。
そして、もう一つ。これはどの時点で依頼人が気づけるのか、にもよるのですが、探偵が依頼人を騙して、お金を取るために強制的に契約した場合は、民法96条「詐欺・脅迫取り消し」にあたります。
ただし、こちらの場合は民法なので、警察ではなく弁護士に訴える必要があります。
■探偵の調査の仕方による問題
違法探偵の怖いところは、調査による違法性というところです。依頼時の違法行為をおこなうのは、ほとんどが悪徳探偵ですが、調査で違法を犯す探偵は悪徳探偵というわけではなく、ただ刑法の知識がない無知な探偵であったり、刑法なんて気にしていたら証拠なんて取れないと思っている強気な探偵の場合が多いからです。
ですが、調査をする際に違法行為を行っていると、例え探偵が独断で考えて行っていたとしても、雇い主である依頼人まで犯罪者という扱いになってしまいます。
違法行為は、探偵が依頼人に行う中間報告や最終的な報告書を見れば気付けることもあるので、何が違法になるのかを覚えておきましょう。
探偵が調査中に、決定的な証拠をカメラに収めるために勝手に人の敷地の中に入ってしまう。これは刑法130条「住居侵入罪」になります。対象者を追いかけている間に、気が付いたら敷地内に入っていた、なんてこともあるかもしれませんが、「うっかりしていて」という言葉は通用しません。
探偵から送られてくる写真、ビデオを見て、このアングルってどこからとっているのかと不思議に思うものがあれば、この刑法に触れていることがあり、当たり前ですが離婚裁判やその他の裁判のときの証拠として提出することはできません。
提出した時点で、探偵と依頼人に刑事罰を言い渡されてしまいます。
次に行われやすいのが、対象者のポストを除いて勝手に手紙などの封を開けてしまった場合です。はがきの場合は微妙なラインではありますが、封をされているものに関しては、刑法133条「信書開封罪」にあたります。
探偵から報告を受けた時に、その情報はどこから仕入れたのかということが気になったら聞いてみてください。違法だとわかっていて、違法を犯している探偵は本当のことを話したりはしませんが、無知な探偵であれば教えてくれるでしょう。
また、違法探偵に依頼してしまったがために、依頼人も犯罪に巻き込まれてしまった場合には、民事での救済があります。民法90条「公序良俗違反」です。これは、違法探偵が違法な調査をした時や探偵が依頼人に寮さ料金を大きく吹っ掛けていた時に適応されます。
刑法で依頼人も罰せられそうになったら、私は何も知らなかったんですと言って、この民法を持ち出せば、犯罪者にはならずに済むかもしれません。
■調査報告をする時に起こる問題
探偵からの報告を受ける時にも違法は潜んでいます。
例えば、調査結果が世間一般的にまずい内容(社会的信用を失い大打撃を受ける結果)などが出た場合に、探偵から「この内容を世間にばらされたくなければ、金をよこせ」などと言われた場合は、刑法222条「脅迫罪」にあたります。
探偵に依頼する人の中で、依頼するかどうかを迷っている人は、調査結果をもとに探偵から強請られたらどうしようと考えている人もいるでしょう。ですが、強請るという行為は犯罪ですので、実際にされたとしても警察に突き出すことができます。
次に、調査結果を探偵が周りに言いふらしてしまい、依頼人の名誉が傷つけられた場合には刑法230条「名誉棄損罪」に当てはまります。もともと探偵は守秘義務を守らなければいけない職種なので、他の依頼人にもバレてしまったら信用を失い廃業することになりますが。
これと似ているものの、もっと悪質なのが、調査をしていて本当のことを知っているのに、依頼人や対象者の悪い噂を流したり、誤った情報を世間に流した場合には刑法233条「信用毀損罪」になります。
こういうことをするのは完全に悪質な悪徳探偵が行うことです。すぐに警察に連絡をしましょう。
これは、もしかしたら新人探偵が犯してしまうかもしれないものですが、探偵の調査の仕方が甘かったり、調査結果を伝える場所がよくなかったり、調査結果を伝えるタイミングを誤ったりして、依頼人の通常業務に支障を出してしまった場合、刑法234条「業務妨害罪」になります。
物事をスマートに進められないと、依頼人にも迷惑がかかってしまいますが、そのことに気付いていない経験の浅い探偵がやりがちなことです。
目に余るほどの妨害をされたと感じたら、訴えるのも一つの手です。
最後は、全てにおいてなのですが、契約時や調査報告をする際に、依頼人に対して故意に嘘をついて、金銭をだまし取った場合は、刑法246条「詐欺罪」になります。
悪徳探偵がよく行っている行為は、ほとんどがこれに当てはまります。悪徳探偵に依頼をして失敗をしたと落ち込むのではなく、騙されたと思ったらすぐに警察に突き出しましょう。
この他にも、まだ刑法が適用される内容や民法が適用される内容があります。探偵はアンダーグラウンドな職業だと思って、こういった法律が適用されないと思い込んでいる依頼人もいますが、探偵も普通の一般人です。無法地帯の場所で生きているわけではない、ということを覚えておくと、不自然な行動をする探偵と巡り合ってしまった時に、対処することができるようになりますよ。